天体観測に使える星座アプリはいくつも出ていますが、実用的な機能を備えながら、宇宙への興味をかきたててくれるアプリは少ないように思います。今回紹介する「スカイ・ガイド」(iOS)は、洗練されたビジュアルとシンプルな使い勝手を持つ星座アプリ。キャンプなどに持っていって天体観測をするのにぴったりです。

「ARモード」でスマホをかざして星座を探す

スカイ・ガイドは、GPSを利用した星座アプリです。空にかざすだけで、星や星座、惑星などを見つけられるようになっています。星や星座が分からなくても、画面を見れば名前を知ることができ、さらに詳細ページを表示してWikipediaの解説を読むことができます。天体観測のスポットといえば、電波の入りにくい場所も多くあります。この点、スカイ・ガイドはオフラインでも使えるので、どこに出かけても天体観測が楽しめます。

左:画面に今いる場所から見える星々が表示される。BGMは荘厳な雰囲気右:Wikipediaの記事の抜粋などもオフラインで表示される 実際に使い始めてみると、これ以上ないシンプルな使い勝手です。必要なのは「コンパスオン」と「コンパスオフ」の切り替え方を知っておくくらい。空にかざして星を探すときは、コンパスのアイコンをタップして「コンパスオン」モードで使います。そして画面をドラッグまたは拡大縮小すると「コンパスオフ」になり、天体の好きな場所を表示することができます。 星を探すときに便利だと感じたのは、「ARモード」です。コンパスオンのときにカメラのアイコンをタップすると、ARモードになります。実際の景色に星座が重なって表示され、ビルや塔などがあれば、それが星座を探す目安になるほか、建物などとの比較で星座の大きさも格段にイメージしやすくなります。ただ真上の空を探すときは意味がありません。また暗すぎるとノイズが増えてしまい、かえって見にくくなりますので、夕方や宵のうちに使うのがよさそうです。

左:カメラのアイコンをタップするとARモードに。画面を二本指でスワイプすると、ブレンディング濃度を変えられる右:真っ暗闇でも刺激が少ない「ナイトビジョン」も搭載

星をタップすると鳴る音で表面温度や明るさを表現

ところで使っていると分かりますが、星をタップすると音が鳴ります。実はこれ、星の温度や明るさによって変わる仕組みになっています。 表面温度が高い星は高音で鳴り、低温の星は低い音で鳴ります。また明るい星は大きな音で、暗い星は小さな音が鳴ります。情報ページを開けば天体の詳しい情報を読むことができますが、暗がりで記事を読むのは避けたいもの。タップするだけで星の性質が分かるようになっているのは秀逸です。暗がりの中で耳を澄ましながら星の性質を想像するのは、なかなか幻想的な体験です。

天体の検索機能や人工衛星・流星群の通過を知らせる通知機能が便利

星を探すときに、ぜひ利用したいのが検索機能です。検索機能では「星座線」「恒星」「太陽系」「彗星」などのカテゴリが用意されていて、それぞれのカテゴリを開くと明るさやアルファベット順、可視性などで並べ替えることができます。地平線の下に沈んでいる星や宇宙の深部にある銀河や星雲などは、画面をドラッグしても見つけにくいので、検索を使うのが手っ取り早く確実です。 個人的には、「夏の大三角」や「北斗七星」といったアステリズム(星群)で検索できるところも気に入っています。ただ種類が少ないのでもう少し増えると助かりますが。

左:カテゴリごとに整理されている右:リストをスワイプして情報ページを開いたりお気に入りに登録したりすることが可能 また、これは便利と感心しきり通しだったのが、上空を通過中の衛星や、近い将来ピークがくる流星群をリストで確認できることです。衛星のリストは「通過」順に並べ替えることができ、これを見れば空の上をさまざまな衛星が飛び交っているのが分かります。ISS(国際宇宙ステーション)やH-IIAロケットなどが上空を飛んでいるのを肉眼で見たいなら、活用しない手はありません。 ISSや明るいイリジウム衛星などが通過するときときは、通知も届きます。条件が合えば、明るいうちでも肉眼で見えることがあります。通知を見てからアプリを開いて、軌道を調べても余裕で間に合います。リストをスワイプし時計のアイコンをタップすることで、通知を受け取りたい衛星を個別に指定することも可能です。

左:リストには肉眼で見られるものが基本的に並んでいる。いつ通過するのかが一目瞭然右:ISSが上空を通過するときは通知が届く

時間を自由自在に変化させて、天体の動きを理解する

スカイ・ガイドには、位置や日時を指定して天体の動きを表示する機能もあります。この機能は、たとえば彗星を見たいときなどに効果を発揮します。 有名なハレー彗星などは、76年に一度しか地球に近づきませんから、実際に肉眼で見られるかどうか微妙なところです。スカイ・ガイドなら、情報画面でハレー彗星の近日点の日付を調べて時間をセットすることで、地上から見えるハレー彗星を画面上で再現できます。

次回は2061年夏に見られる予定のハレー彗星。コマ(髭)やテイル(尾)も動的に再現される 画面に表示されている矢印のボタンをタップすると、天体の動きがアニメーションで再現されます。再生速度を10000倍速以上にセットすると、星々の軌跡が目に見える形で表示され、天体の動きや地球が自転しているということがより理解しやすくなります。 矢印ボタンを繰り返しタップするとスピードが増減するので、観測しようとしている惑星がいつどの方角から現れるのか、あらかじめ調べておくような使い方にもぴったりでしょう。

左:再生速度を10000倍速以上にすれば星の軌跡も鑑賞できる右:観測場所は現在地のほか地図で指定することもできる

まとめ:天体観測に持っていくアプリの決定版

スカイ・ガイドは、太陽系にある身近な惑星や星座、さらに深宇宙にある銀河や星雲などを手軽に観察できる星座アプリです。似たような星座アプリには、定番の「Star Walk 2」があり、気になっている人も多いと思います。正直なところ、キャンプなどへ行ったときに星や星座の名前を知りたいだけなら、どちらを使っても大差ありません。情報量やビジュルアルの多さではStar Walk 2に分があるので、宇宙について知識を深めるという目的があるならStar Walk 2のほうがおすすめです。 スマホをかざして星座を探す、宇宙を身近に感じる天体観測アプリ「Star Walk 2」 今回紹介したスカイ・ガイドは、天体観測に特化した機能を多く用意しています。検索で表示されるリストは惑星や衛星を観測するのに、とても役立ちます。衛星をライブトレッキングしたり、彗星や星雲、深宇宙にある星団や銀河を追加料金なしで調べられるのもうれしいところ。天体観測が目的なら、スカイ・ガイドのほうが使いやすいと感じるところが多々ありました。見た目はシンプルですが、ロマンあふれる宇宙の雰囲気を感じながら天体観測できるのがスカイ・ガイドの大きな魅力です。

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