米メディアWiredのMat Honan氏が実施した実験「48時間、Facebookで見たもの全てにいいね!」の結末がミステリー・ホラーを感じさせるものになっています。どうなったのでしょうか。 I Liked Everything I Saw on Facebook for Two Days. Here’s What It Did to Me | Gadget Lab | WIRED
実験ルール
実験のルールをざっくり説明すると以下のとおり。
Facebook上で見かけた投稿に全ていいね!する(他のウェブサイトは除外。キツすぎるから) いいね!すると表示される関連ページなどは最初の4つだけにいいね!する(次々に表示されてキリがないから) 知人の親類が亡くなったという投稿だけは、唯一の例外とした 時間無制限(だったが、48時間でギブアップした)
Facebookは、ユーザーのニュースフィードに何を表示するかについて複雑なアルゴリズムを用いています。Honan氏は、そのアルゴリズムを評価しつづけたら……つまり、アルゴリズムが提示してくれる投稿にいいね!を押し続けたら一体何が起きるのか確かめてみたかったそうです。
どうなったか
なぜMat Honan氏は、実験を48時間でギブアップしたのでしょうか。それは次の報告を読めば分かるでしょう。
結果
※以下、元記事の抄訳を引用します。
私のニュースフィードは驚くべきほど短時間で様変わりした。そこには、もはや人間はいなかった。ブランド広告とウェブメディアなど人間ではないものからのメッセージで埋め尽くされた。 その上、コンテンツ工場がトップに上がった。私のニュースフィードは、Upworthy(大手バイラルメディア)とハフィントン・ポストだらけになった。実験初夜、ベッドでニュースフィードをスクロールしてみた結果、表示されたものを順に並べてみよう。 Huffington Post, Upworthy, Huffington Post, Upworthy, a Levi’s ad, Space.com, Huffington Post, Upworthy, The Verge, Huffington Post, Space.com, Upworthy, Space.com. ベッドでこう思ったことを覚えている「くそ、ガラクタめ。ガザに関する投稿にいいね!しておくべきだった」。そして、Pro Israel(イスラエルの友のためのポータルサイト、保守系)のメッセージにいいね!した。
で、翌朝。私のニュースフィードは超"右"寄りに吹っ飛んでいた。反移民ページなどをいいね!する機会を提供された。もちろん、いいね!した。そして、保守系メディアのThe Conservative Tribuneが繰り返し表示されるようになった。 Facebookの投稿には、特定のパターンがあることを学んでいった。疑問形で投稿を締めくくるとか、そんな感じ。どこもかしこもユーザーを巻き込むために似たような戦術を採用しているんだな、と気付き始めた。もし、そういった餌に食いつくと、うんざりする広告を見せられることになるだろうね。 それと、モバイルとデスクトップとで違うフィードを見せられることには感銘を受けた。初日の夜、モバイルだと先ほどのような状態だったのに、デスクトップでは何とか人間(つまり友だち)からの投稿がフィードに表示されていた。奇妙だ。希少価値の高いモバイルの小さな画面では、Facebookのアルゴリズムは友だちを隠してゴミクズを見せてくるんだから。 2日目、Facebookを見るのが怖くなり始めた。前日にちょうど右寄りに漂流していたように、いま私のニュースフィードは左寄りに漂流していた。左翼の方々の投稿がそこかしこに点在していた。ウォッチリストに入れられるんじゃないかって恐怖から、それにいいね!するのを恐れていたと言ってもよい。 大人気バイラルメディアBuzzfeedの「ある男が踊っている」って記事や「タイタニックのキャラクターの中で誰が好き?」って記事、ニューヨークマガジンの記事やCNNの卑猥な記事なんかをいいね!する機会も与えられた。私のフィードは、メディアの人間が恥じるべきゴミ記事だらけだった。全部、いいね!した。
知人から「ハックされてないか?」とか「私のフィードがあなたのいいね!した記事で文字通り一杯で、ウケる。あなたがいいね!した以外の友だちからの投稿が一切ないんだけど」なんて指摘を受けた。もちろん、いいね!で返信した。 実験中、ずっとこんな調子だった。私のおかしな行動は、友人たちのフィードで暴走しつづけたんだ。ある仲良しは「私のニュースフィードの70%はMatのいいね!したもので占められている」と記した。 実験の結果、最終的には何回いいね!したかは分からない。多すぎて。少なくとも、ページは1000以上いいね!していた(たいていは忌々しいか平凡すぎるページだ)。 いいね!しまくると、Facebookには何も好きなモノがなくなる。もう懲りごりだ。
※抄訳ここまで。
問題点
何でもいいね!をしまくると、結果として自分の好みではない投稿でニュースフィードが埋まるようになるのは、ある意味で当然です。でも、少し考えるとおかしい話かもしれません。表示される投稿は、ユーザーに最適なものになるようにFacebook側によって操作されているからです。 今回の実験は、現時点におけるFacebookのアルゴリズムの限界を表しています。なぜなら、Facebook側がオススメするものとして表示した投稿や関連ページなどをいいね!し続けた結果、悲惨な結末を迎えたからです。とすれば、Facebookのアルゴリズムを過信することはできないということでしょう。 では、逆に自分の好みの投稿だけいいね!し続ければいいのかというと、それもまた難しい問題をはらんでいます。日頃浴び続ける情報のシャワーが、自分のニッチな興味関心だけに基づくものになると、いわゆるフィルターバブルの問題が発生します。自分好みの情報空間に閉じ込められるのも、また危険なことなのかもしれません。実際、実験では特定の政治傾向を有するメディアをいいね!すると、結果としてその傾向の情報を多く届けてくるようになりました。 また、元々友だちとつながるツールであったFacebookが、過度に商業的なツールになりかねないことも、今回の実験から明らかになりました。 この48時間の実験を心のどこかに留めておいた方が、より良いFacebook生活を送ることができるかもしれません。 で、この記事をいいね!すると、ニュースフィードには、どのような変化が起きるのでしょうか。そして誰もいなくなったりして。